ポストコロナの日本
新型コロナのパンデミックの影響により、少子高齢化、経済格差、巨額の財政赤字など、これまで日本が直面してきた課題がさらに悪化してきており、これらの問題に伴う社会的困難を月刊誌などマスメディアが盛んに取り上げています。中央公論7月号は、2月に孤独・孤立対策担当大臣に就任した坂本哲志氏へのインタビュー記事を掲載しています。特集記事の見出しは、「孤独と怒りに社会は軋む」というものです。
これらの記事にはコロナ禍によって顕在化した日本の弱点を分析したものも多いですが、その一方で、悲観論だけでは危機を乗り越えられないと考え、ポストコロナの日本を長期的に見据え、日本の潜在的な強みを活かして明るく価値のある未来を築こうと主張する議論も少なくありません。そうした趣旨の記事を、以下にご紹介します。
河合氏は、日本社会に既存していた課題がコロナ禍によって浮き彫りになり、悪化して危険な状況にまでなったと指摘しています。とりわけ出生数の減少の加速は深刻で、いずれは日本にとって致命傷となりかねないと警告しています。コロナ禍でセックスレスが進行するなか、2020年の婚姻件数も前年比で10%以上減少する見通しであり、未婚化、晩婚・晩産化によって出生数が低下し、将来に広く影響を及ぼすことになるといいます。
さらに、コロナ禍によって内需が縮小し、高齢者の消費マインドが冷え込み、運動不足や他人とのコミュニケーション欠如により、フレイル(虚弱)な高齢者も増加しました。
2025年までには65歳以上の5人に1人(750万人)が認知症になると予想されていましたが、今回のパンデミックでそれが加速されると河合氏は予想しています。社会の高齢化に伴い、店舗やレストランも24時間営業をやめるようになると予想されます。
河合氏は、これまで日本政府や企業がとってきた戦略、つまり高齢者市場の拡大や24時間社会、外国人観光客や労働者の受け入れなどはすべて幻想にすぎなかったことが証明されたとして、これからは現実を直視して人口減少に耐えうる社会をつくることが重要だと強調しています。縮小する市場では、一人一人の生産性および付加価値を向上させ、各企業それぞれが自社の強みを見直し、何を残し、何を手放すかを判断して「戦略的に縮む」必要があるといいます。
河合氏はさらに、企業がそれぞれ自分たちのスキルを活かし、異分野に展開していけば、新たな商品やサービスが生まれ、高齢者向けの商品開発のパイオニアになるチャンスもあると語っています。
河合氏は、危機対応の面からいえば、コロナ禍によって、真実を客観的に見つめ、適切な論理によって行動することができないという日本の脆弱性が浮き彫りになったとし、日本社会に特有の4つの資産を活用して、明るい未来を築くことを提唱しています。
「人口減少が進む日本においては、社会も、企業も、個人もメリハリをつけるしかありません。日本はこれから誰も経験したことのない社会に突入していきます。どうせ縮まざるを得ないのであれば、受け身にならず、積極的に縮むことです」